地球を突き動かす超巨大火山

地球を突き動かす超巨大火山

著者 佐野貴司(さの・たかし)

新しい「地球学」入門

はじめに

 地球誕生から46億年という長い歴史の間には、我々の生活している大地が大規模に割れ、大陸が移動するというダイナミックな現象が起きてきました。そして現在でも海底の拡大による大洋の形成や大陸同士の衝突による巨大山脈の隆起が続いています。しかし我々はこれらの地質現象をほとんど実感することができません。
 火山噴火は地球がダイナミックに活動していることを最も実感できる地質現象です。火山の噴火を一度でも見た人は、その光景を一生忘れることはないそうです。熱のマグマの噴出は壮大であり、噴火に伴う轟音や地響きには身震いするほどです。
 古来、大規模な火山噴火は人々の生活に何度も被害をおよぼしてきました。その一方で、噴火を繰り返してつくられた雄大な火山地形は人々を魅了します。また多くの火山の麓には、良質な温泉が湧き出しています。そのため、日本の大部分の国立公園には火山が含まれます。このように我々は火山から災害を被こうむるだけでなく、さまざまな恩恵も受けているのです。風光明媚な景観のでき方や温泉の起源を知るために火山を調査することは楽しい作業です。
 一方、我々人間にとってダイナミックに感じられる火山活動も、地球全体の運動に比べると無視できるほど微小な現象であるかもしれません。世界全体を見渡すと、火山の分布は局所に限られており、マグマが存在するのは深くても地下100㎞程度です。これに対し、地球の半径は6400㎞もあり、内部は大規模に循環しています。そう考えると、地球全体の情報を知るための学問として、火山学は非力です。
 火山の研究を行うよりも、地下1000㎞を超える超高圧条件で岩石の合成実験を行ったり、地震波を使って全地球の内部構造を決定したり、全マントルの壮大な循環運動をシミュレーションしたりする方が、地球全体の運動の歴史を知るためには重要なのかもしれません。しかし、それは火山学が日本に分布する活火山などの、比較的小規模な火山のみを対象とした場合です。
 これまで一般にはあまり知られてきませんでしたが、長い地球の歴史において大規模に大陸を割り、大地を突き動かしてきた超巨大火山がいくつも存在することがわかってきました。超巨大火山をつくった源みなもとの物質は、全マントル規模での大循環を引き起こしてきた可能性があります。もしそうならば、超巨大火山は地球全体の運動を知る上で重要な研究対象と言えるでしょう。超巨大火山の活動に関連した小規模な噴火は、現在でも南太平洋の海底やアフリカ大陸で見ることができます。
 このように重要な研究対象であるにもかかわらず、日本などに存在する活火山に比べて、超巨大火山の調査はあまり行われてきませんでした。超巨大火山の多くは、インドの砂漠地帯、シベリアの奥地、中国の山岳地帯などのアクセスが困難な地域に存在するからです。最も調査に手間取るのは深海底に分布する超巨大火山です。船を使って調査するしか方法がないからです。しかし未開の海域で地質調査を行うというのは、とてもやりがいのある仕事です。これまでの調査船を用いた研究により、太平洋の下には大陸の超巨大火山よりも広大な火山が複数発見されてきました。
 私は学生時代から今までの約20年をかけて超巨大火山の調査を行ってきました。それぞれの火山のサイズは日本列島よりも広いため、調査はまだ終了しておらず、いまだに全体像は不明のままです。しかし、世界各地の研究者との共同研究により、いくつかの重要な事実が明らかになってきました。そこで本書は、私の研究成果も取り入れ、これまでに世界中の火山学者達が明らかにしてきた超巨大火山の形成過程やマグマ生成モデルについて紹介していきます。さらに超巨大火山の噴火が引き起こしたかもしれない生物大量絶滅についても解説します。
 地球を突き動かしている熱々の現場をのぞきに、さっそくでかけることにしましょう。

著者 佐野貴司(さの・たかし)

一九六八年静岡県生まれ。一九九七年、東京大学大学院理学系研究科地質学専攻博士課程修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員(研究従事機関:京都大学)、富士常葉大学環境防災学部研究助手、助教授、国立科学博物館地学研究部研究官、研究員、研究主幹を経て、二〇一五年より鉱物科学研究グループ長。専門は火山学および岩石学。主な研究対象は超巨大火山。

[B1925]

地球を突き動かす超巨大火山 新しい「地球学」入門

著:佐野貴司

超巨大火山はどうできたのか? 大陸移動やプレートテクトニクスの原動力を生み出すマグマとマントルと地球内部のふしぎな関係が見えてくる。

定価 : 本体900円 (税別)

ISBN : 978-4-06-257925-4

既刊一覧

連載読み物

サンゴ礁からの警鐘
「7割死滅」の次に待ち受けていること

最終回 北へ逃げるサンゴ──「絶滅」リスクとの攻防

山本智之

北限を超えるサンゴ、それを追う天敵  前回までに見てきたように、沖縄などの...

2017/04/21

ページTOPへ