すごい家電

すごい家電

著者 西田宗千佳(にしだ・むねちか)

いちばん身近な最先端技術

 はじめに

 私たちが日々暮らすなかで、家電のお世話にならない日はありません。テレビのような娯楽機器から、洗濯機・冷蔵庫のような「生活家電」とよばれるもの、そして、照明機器や電気給湯器のような住宅にひもづくものまで、バリエーションは豊かです。それほど、「電気」というエネルギーが使いやすく、私たちの生活にとって基盤となるものである、ということを示しています。

 必要不可欠な家電機器ですが、ここ数年、どうも旗色がよくないように思えます。20世紀後半、私たちの生活が豊かになっていく上昇曲線と、家電製品が家庭に普及していくペースとは、同じような軌道を描いていました。

 しかし現在、各家庭にモノがいきわたり、以前ほど家電製品に注目が集まりにくくなっています。家電はもはやあたりまえのもの、新しいテクノロジーとは無縁……、そんなふうに思っていないでしょうか。

 ――でも、違います。

 家電製品は、忙しい私たちの家事の手間を軽減してくれたり、生活に潤いや楽しみを与えてくれたりと、実にたくさんの役割を果たしてくれています。各家庭に必ず十数種類はある家電の“お目付け役”として、節電と省エネに努める家電も登場しています。

 そのような多様な機能を実現するには、さまざまな科学的背景に基づく知識と、新たな技術開発が必要です。毎日なにげなく使っているあの家電もこの家電も、実は、おどろくほど高度な知恵とテクニックの組み合わせで成り立っているのです。

 本書の目的は、さまざまな家電の背後にひそむ科学的なしくみや工夫、それを支える発想と知恵とテクニックを、製品ジャンルごとに解説することにあります。

 家電はすでに100年近くの歴史をもつ産業です。各製品それぞれに来歴があり、そこからは、家電製品が私たちの生活に定着し、同時に日々の暮らしのあり方に変化を促してきたプロセスが見えてきます。本書では、IT機器を除く家電全17製品をジャンル分けし、それぞれが稼働する原理やしくみ、発展の歴史を解説しました。

 家電にまつわる知識には、耳にしたとたんに「どうしても誰かに伝えたくなる」ものも少なくありません。本書ではそうした知識を「Trivia」として抽出し、強調表示しました。みなさんもぜひ、誰かに伝えてみてください。

 本書の執筆・制作にあたっては、パナソニック株式会社に全面的にご協力いただきました。パナソニックは、調理家電からAV機器、住宅設備にいたるまで、あらゆる家電を手がける総合メーカーです。しかも、その生産設備や工場、研究施設の多くが国内に存在します。

 多種多様な家電に関する知識を直接、技術者・開発担当者に尋ね歩くには、同社にご協力をお願いするのが最適と判断しました。本文中で具体的な事例として紹介する製品群についても、多数の情報・資料をご提供いただいています。

 各製品の生産拠点を訪れて、実際に開発を担当した方々から伺ったお話は、長年この産業を取材してきた私にとってもおどろきの連続でした。本書を通じて、最も身近な先端技術の粋である家電のすごさを、ぜひ体感していただければと思います。

 そして、開発の裏側に隠された技術者たちの知恵と工夫を、どうかお楽しみください。それらを知ることで、きっともっと家電が身近なものになり、好きになっていただけると確信しています。

著者 西田宗千佳(にしだ・むねちか)

一九七一年、福井県生まれ。ネットワーク、IT、先端技術分野を中心に活躍するフリージャーナリスト。著書に、『スマートテレビ』(アスキー・メディアワークス)、『世界で勝てるデジタル家電』『クラウド・コンピューティング』(ともに朝日新聞出版)、『ネットフリックスの時代』(講談社現代新書)、『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり 』(共著、ブルーバックス)、『iPad VS. キンドル』(エンターブレイン)などがある。小寺信良氏との共同発刊メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を毎週金曜日に配信中。

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すごい家電 いちばん身近な最先端技術

著:西田宗千佳

読むほどに膝を打つ、驚きの発想と技術。「より省エネで、より快適」を追求する現代の超技術はどう進化するか。全製品の開発担当者を徹底取材。

定価 : 本体1,100円 (税別)

ISBN : 978-4-06-257948-3

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