数学ロングトレイル「大学への数学」に挑戦 関数編

数学ロングトレイル「大学への数学」に挑戦 関数編

著者 山下光雄

はじめに

本書は、大学を目指して日夜「数学」に取り組んでいる高校生に、長年の経験からぜひこれは「伝えておきたい」と思うことを、マンツーマン形式で語りかけるように書いた、『数学ロングトレイル』シリーズの第3作で、「関数」をキーワードにまとめた『関数編』である。

 教科書の内容は一通り理解はしたつもりだけれど、いざ入試問題に取り組んでみるととても難しいと感じている多くの高校生に、その実力をもう一段階上のレベルに引き上げるにはどういう態度でどういう勉強をしたらよいかを、「入試問題」を具体的に解き進めることを通して書いたものであり、若い読者に向けての、言わば私の遺言のようなものです。

 また、本書は過去から未来へと果てしなく続く「数学の伝統」と、そこに広がる数学の「風景」の中に著者と共に分け入り、歴史的な問題を通して数学に親しむことを目指したものでもある。かつて数学者たちがこぞって掘り進めた鉱脈であるけれども、掘り尽くされて、いつしか数学の主流から外れてしまった数学もあり、それはかろうじて入試数学の問題として顔を出すものもある。そういう問題を積極的に選び出し、かつての数学者の鋭いノミ跡に光を当てようと試みてみた。数学者たちが考えたそのような“路傍の石”を通しての著者からの「数学の誘い」でもある。

 学校で講じられる数学(いわゆる「学校数学」)は効率が重視され、なぜそのような「数学」が、あるいは「公式」が考えられたか、それが出来上がる過程にまで踏み込んで語られることは少ない。本書はそのような普通の教科書に述べられない部分にも触れたので、数学を愛する一般の方にも興味を引く構成になっているのではないかと自負している。

 次に、本書を読み進める上での注意事項をいくつか挙げておこう。

 分かりやすいことを旨として書き進めたけれど、あまり厚くならないよう、普通の教科書に載せられている基本的なことは断り無しに使っている、つまり教科書は一通り学んでいることを前提にしているので、手許に自分の使用した「教科書」あるいはブルーバックス『新体系 高校数学の教科書』(上・下、芳沢光雄)などを置いて、定義・公式などは随時参照し、基本事項を確認しつつ読み進めるとよい。

 また、「関数」をテーマにまとめたので、あちこち教科書を参照しなければならない(通常の高校過程では1~3年に分散して講じられている)不便も生じているかと思うが、このテーマを語っていったら自然にこのような形になったためであり、ことさら奇をてらったつもりはない。

 例題は大学入試で出題された問題を使用しているが、過去多数の出題を見ているものは、出題校を示していない。その場合、問題の数値は最もシンプルなものに戻し、条件は出来うる限り単純化し、手垢の付いていない原初のものを例題としたためである。

 また、本書は網羅的に問題を集めたものではなく、他の参考書などに載せられているタイプの問題でも扱わなかったものは多い。また、少しばかりはその逆もあるが、著者の好みというに過ぎない。

 本書(この『数学ロングトレイル』シリーズ)が、数学を愛する一般の方、数学を学校で講じておられる方に、また大学を目指して日夜「数学」に励み日々努力している高校生に、少しでも「役に立つ」ものになっており、また大学入学後の「数学」を学ぶ上での指針ともなっているならば、著者の大いなる喜びとするところである。


著者 山下光雄

一九四八年、愛知県田原市に生まれる。一九七二年、名古屋大学理学部数学科卒業。愛知県の東邦高等学校、神奈川県立相模原高等学校、同大和西高等学校教諭などを歴任。二〇〇六年より桐蔭学園高等学校講師。二〇一四年三月に退職し、現在は数学関連の書籍の執筆に励む。著書に『数学ロングトレイル「大学への数学」に挑戦 じっくり着実に理解を深める』『数学ロングトレイル「大学への数学」に挑戦 ベクトル編』(講談社ブルーバックス)、『対話でたどる円の幾何』(オーム社)がある。

連載読み物

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〔フローレス篇〕第3回 予想外の人類を研究する。

文 川端裕人

本当に新種の人類なのか?  予想もしない場所に、予想もしない人類がいたことがわかっ...

2017/06/20

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