カラー図解 はじめての生理学 上

カラー図解 はじめての生理学 上

著者 田中(貴邑)冨久子(たなか(きむら)・ふくこ)

動物機能編

まえがき

 生理学はからだの正常な機能に関する学問ですが、研究の方法や制約などから、人をはじめとする哺乳動物のみならず種々の生物の機能をも調べることにより発展してきました。この生理学の知識は、人を対象とする医師、歯科医師といったメディカルだけでなく、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、柔道整復師、臨床検査技師、放射線技師等々の多岐にわたるコメディカルと呼ばれる領域の医療従事者にとっても必須のもので、これらメディカル/コメディカルを目指す学生が必ず学ばなければならないものとなっています。また、人以外の動物を対象とする獣医師やそのコメディカルの従事者にとっても同様です。ですから、これらの医療従事者を目指す学生を対象とした生理学教科書は数多く出版されています。おそらく、数十冊あるいは百冊に上るかもしれません。

 でも、生理学という学問の知識が、医療のためだけに存在価値があると考えるのは間違いです。私は、かつて、医学部や看護学部の学生に生理学を教えましたが、強い関心は生理学を研究することにありました。メディカル/コメディカルには直接関係ない領域でも、私と同じように、研究して新しい知識を得ることに情熱をもつ人、このような人たちはたくさんいます。そして、さらにたくさんの、医療にも研究にも関係のない一般の人たちが、本を読むことによって、自分や動物のからだの機能に関する知識を得ることに興味をもっているのではないでしょうか。

 この本は、こういった医療とも研究とも関係のない、一般の人たちを対象に、生理学という学問の知識をお裾分けすることを目的に企画されました。決して教科書ではありませんので、例えば、サラリーマンの方々が電車の中でも気軽に読んでいただけることを期待して書きました。でも、医学部や看護学部、また獣医学部などの教科書と同じような内容にしましたので、メディカル/コメディカルの教育の雰囲気は味わっていただけるかと思います。

 ただし、ブルーバックスというシリーズの構成上の制約から、通常の教科書では行われない、動物性機能系について語る上巻と植物性機能系について語る下巻の2冊に分けることになりました。その理由は以下のようです。

 からだの中では、一定の機能をもった器官同士がまとまって「系」を構成して有機的な働きをし、生命を維持したり、種族保存をし、さらに目標を設定して価値的に生きてゆこうとしています。これらは、神経系、感覚系、筋・骨格系、循環系、呼吸系、消化系、泌尿系、内分泌系、生殖系、免疫系などです。このうち、動物でよく発達している器官系である神経系、感覚系、筋・骨格系を動物機能系と呼び、その他の器官系を植物器官系と呼びます。そこで、本書は、分量との関係から動物機能編と植物機能編として2冊に分けることにしました。

 本書は新書版という制約上、詳細な図を掲載することはできませんでしたが、カラー化したことで、より理解しやすくなったと思います。なお、本書のために図版の引用を許可下さった著者の方々に、お礼を述べさせて頂きます。

 この本は、五日市哲雄氏とブルーバックスの梓沢修氏の生理学へのご理解のもと、約5年前に企画されましたが、私を含めて諸事情もあり、長い年月を経てやっと完成の運びになりましたことを申し添え、講談社関係諸氏ともどもにお礼を申し上げます。

著者 田中(貴邑)冨久子(たなか(きむら)・ふくこ)

医学博士、横浜市立大学名誉教授。一九六四年横浜市立大学医学部卒業、一九六九年同大大学院医学研究科修了、一九八五年同医学部教授、同医学部長を歴任。 専門は生理学、神経内分泌学、脳科学。日本生理学会、日本内分泌学会、日本神経科学学会、日本神経内分泌学会、日本生殖内分泌学会などで理事、幹事、会長 を務めた。主著に『女の脳・男の脳』、『女の老い・男の老い』(NHKブックス)、『脳の進化学』(中公新書ラクレ)、『がんで男は女の2倍死ぬ』(朝日 新書)。学会活動は貴邑冨久子として行っている。

[B1978]

カラー図解 はじめての生理学 上

田中(貴邑)冨久子

人の生命現象は、どのように営まれているのか、その仕組みを豊富な図解で解説。「動物機能編」では脳・神経系、感覚、運動を網羅。

ISBN : 978-4-06-257978-0

ページTOPへ