結果から原因を推理する 「超」入門 ベイズ統計

結果から原因を推理する 「超」入門 ベイズ統計

石村貞夫(いしむら・さだお)

まえがき

 ベイズ統計は、18世紀英国の牧師であり数学者だったトーマス・ベイズの書き残した遺稿を、ベイズの友人リチャード・プライスが整理し、さらにピエール・ラプラスが「ベイズの定理」としてまとめた式が、出発点になっています。
 ベイズ統計とは何なのでしょうか? 多少の誤解は恐れず、簡潔に紹介するなら、“原因の確率を結果から予測する”ための統計が、ベイズ統計です。
  
 ベイズ統計は、その柔軟な発想のため、数学者から何度も攻撃されましたが、今では、パターン認識、情報検索、医学的診断、有向グラフを使ったネットワークなど、多くの分野に応用され、注目を浴びています。
 有名なところでは、インターネットの検索エンジンや、将棋を指す人工知能などの開発も、ベイズ統計の応用の例です。
  
 この本では、ある犯罪の捜査をめぐる愉快なストーリーを読みながら、ベイズ統計の一番重要な出発点であるベイズの定理を中心に、学んでいきます。
 ストーリーの舞台は、ベイズの故郷でもある英国に設定しました。
 英国ミステリーに登場する名警部たちは、殺人事件の捜査のとき、米国警察のような拳銃を所持しません。
 この警部たちは、すぐれた灰色の脳細胞だけを頼りに、事実と事実を論理的につなぎ合わせ、次第しだいに、真犯人を追いつめていきます。
 シャーロック・ホームズの時代には、馬車や手紙が重要な手段でしたが、現代では、コンピュータを駆使し、インターネットで検索し、科学的理論的情報処理により犯人を追及します。
 その方法には、高度な応用数学や、難解な確率論や、わかりにくい数理統計学による予測も含まれます。
  
 この世の中は複雑な因果関係で成り立っています。
 したがって、ある結果が起こるとすれば、それには原因となる何かが存在するはずです。
 数理統計学は、収集したデータから、将来の結果を予測しますが、今、注目を浴びているベイズの定理は、逆に、結果からその原因を推定します。
 ということは……。
 このベイズの定理を使えば、殺人事件という結果から、犯人という原因を推理することができるでしょうか?
  
 ジェローム・K・ジェロームの『ボートの三人男』の中に、新聞の天気予報を信じたばかりに、太陽の輝く秋の休日をふいにし、翌日はひどい雨と寒い風でカゼとリュウマチにやられるという話が出てきます。
 とかく、予測はそのように難しいものです……。
  
 さて、この本の主人公「ベイズ警部」は、首尾よく確率を予測し、真犯人を検挙することができるのでしょうか?
 それは、この本を読んでのお楽しみです。
  
 この本を書くにあたり、講談社ブルーバックスの慶山篤さんには、犯罪の検索から文章の表現に至るまで、何から何までお世話になりました。深く感謝の意を表します。
  
 ところで、ロンドンのベーカー街221bが、ホームズの活躍した時代には存在しなかったように、この本に登場する地名、人物、データなどの多くは、架空のものです。
 したがって、ミッドサマーが英国に存在しないように、ミッドスプリングスも存在いたしません。

石村貞夫(いしむら・さだお)

1977年早稲田大学大学院修士課程修了。1981年東京都立大学大学院博士課程単位取得。理学博士。元鶴見大学准教授。統計コンサルタント、統計アナリスト。著書に『すぐわかる統計解析』『すぐわかる多変量解析』(いずれも東京図書)、『クックルとパックルの大冒険』(共著、共立出版)、『だれでもわかる数理統計』(講談社)など多数。

[B1998]

結果から原因を推理する 「超」入門 ベイズ統計

石村貞夫

犯人は誰だ!? 結果から原因を推測する「ベイズ統計」の基本を、推理ドラマになぞらえて解説。真実はいつも1つ…ではなく確率的!

ISBN : 978-4-06-257998-8

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