三つの石で地球がわかる

三つの石で地球がわかる

藤岡換太郎(ふじおか・かんたろう)

岩石がひもとくこの星のなりたち

はじめに

 石井さん、石川さん、石塚さん、石原さん、石渡さん。私が所属する日本地質学会の名簿に見つけた、「石」がつく名前です。「岩」も「石がつく字」に含めれば、岩井さん、岩崎さん、岩橋さん……と、さらに数はふえます。「山」や「川」、「田」などに負けず劣らず、「石」がつく名前もこのように、たくさんあります。みなさんの周りにも何人もいるでしょうし、あるいはご自身がそうかもしれません。これは石というものが、昔から私たちの生活に密着した、ごく身近なものであったことの証左です。
 
 ありふれたものであるだけに、石は「石ころ」とも呼ばれ、なんでも一緒くたに見なされがちです。しかし、「石がつく名前」がたくさんあるように、実は石そのものにも、ものすごくたくさんの名前があるのです。石にはそれだけたくさんの種類があるということです。
 
 私が小学生だった頃はまだ舗装道路が少なく、道端には大小さまざまな石がごろごろしていました。私はそれらを家に持ち帰っては、何という名前の石かを図鑑で調べていました。そんな石好きが高じた結果、私は岩石学者になってしまったわけです。
 
 岩石学者たちの多くは、みずからを「石屋(いしや)」と呼んでいます。そして「石屋」たちの多くは、もともとはそうした「石オタク」だったのです。学会の会合などで「石屋」たちが初めて訪れる建物に入ると、何人かでしきりに床を靴で踏んづけたり、壁を掌でごしごしこすったりしている光景を目にすることがしばしばあります。よく見ると、そういうことをしながら「これは何々岩?」「いや、何々石だろ」などと確認しあっているのだとわかります。
 
 しかし、そのような石オタクではない一般の方々にとっては、石の名前というものはとてもややこしく感じられるのではないかと思います。
 
 最近は、美しい岩石や鉱物のカラー写真をたくさん掲載した写真集や図鑑などがよく売れているようで、石への一般の方々の関心が高まっていることは「石屋」として私もうれしいかぎりです。ところが、せっかく石に興味をもって、もう少し勉強してみようと思っても、岩石や鉱物の本には難しそうな石の名前がずらずら並んでいて、げんなりしてしまうという話を私自身、よく耳にします。結局、一般向けの石の本は、石の姿や面白いエピソードを楽しむだけで、科学についてはあまり書かれていないものが多くなってしまっているようです。
 
 この本は、そういう不満に応えるために書きました。石の名前は、いくつも覚える必要はありません。基本的には、たった三つ、覚えるだけでいいのです。
 
 三つの石を覚えるだけで、石というものの本質がわかります。たくさんあるほかの石のことも、体系的に頭に入ります。さらには、石がどう進化したかがわかります。生きもののように、石も長い年月をかけて進化しているのです。
 
 そして、石の進化とはすなわち、石によってできている地球の進化でもあります。地球が現在の姿になるまでに進化してきた歴史は、三つの石の物語でできているのです。
 
 では、その三つとは何という名前の、どのような石たちなのでしょうか。本書では、タイトルにも表紙や帯にも、あえてその名前は伏せていますので、ぜひこの先をご覧いただき、ご自身でお確かめください。そして、楽しみながら石についての体系的な理解を深めていただければ、著者として何より幸いです。

藤岡換太郎(ふじおか・かんたろう)

一九四六年京都市生まれ。東京大学理学系大学院修士課程修了。理学博士。専門は地球科学。東京大学海洋研究所助手、海洋科学技術センター深海研究部研究主幹、グローバルオーシャンディベロップメント観測研究部部長、海洋研究開発機構特任上席研究員を歴任。現在は神奈川大学などで非常勤講師。「しんかい6500」に51回乗船し、太平洋、大西洋、インド洋の三大洋初潜航を達成。海底地形名小委員会における長年の功績から二〇一二年に海上保安庁長官表彰。著書に『山はどうしてできるのか』『海はどうしてできたのか』『川はどうしてできるのか』(いずれも講談社ブルーバックス)など。

[B2015]

三つの石で地球がわかる

藤岡換太郎

ややこしい知識は不要! 「石の名前」を三つ覚えるだけで、地球のなりたちや、岩石・鉱物の本質的なことがすらすら頭に入ってくる!

ISBN : 978-4-06-502015-9

ページTOPへ