『コーヒーの科学』著者が出題!コーヒークイズ解答編

  • 2016/04/02

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    『コーヒーの科学』著者が出題!コーヒークイズ解答編

    みなさんこんにちは。先週はコーヒーを飲ませてもらえなかったブルーバックスのシンボルキャラクターです。
    旦部幸博先生からの難問コーヒークイズ。みなさんもチャレンジしていただけましたか?

    わたしはこの一週間『コーヒーの科学』を読んで勉強してきましたので、無事全問正解することができました! よく知ってから飲むコーヒーは格別ですね~。

    みなさんも答えが気になっていると思いますので、先生から届いた解答をご紹介します。うーん、コーヒーって奥が深い。




    【問1】 コーヒーの原材料はコーヒーノキというアカネ科の植物の種子である。では、コーヒーノキ属の植物のなかで、現在広く栽培され、生産量のもっとも多い種は?

     A. アラビカ種
     B. カネフォーラ(ロブスタ)種
     C. リベリカ種
     D. ユーゲニオイデス種

     

     正解は「Aのアラビカ種」です。


    コーヒーノキ属には現在125もの種が知られていますが、その中でコーヒー豆を採るために広く栽培されているものは、たったの2種類。「アラビカ種」「カネフォーラ種」です。このうちアラビカ種は15~17世紀に飲用が広まった「最初のコーヒー」であり、現在も全生産量の6~7割を占めています。残りの3~4割のほとんどは「カネフォーラ種」です。この2種にCの「リベリカ種」を加えた3種を「コーヒーの3原種」と呼ぶこともありますが、リベリカ種の生産量はきわめて少量です。Dのユーゲニオイデス種はアラビカ種の先祖のひとつで、品種改良などのための栽培はありますが、コーヒー生産用としては栽培されていません。

     

    【問2】現在の、飲み物としてのコーヒーの起源と言われるのは次のうちどれ?

     A. エチオピア西南部族が日常の生活で利用した「カリ」
     B. ペルシャの医学者たちが薬として利用した「ブン」
     C. イエメンのイスラム修行者が眠気覚ましに使った「カフワ」
     D. アフリカ東部にあるビクトリア湖沿岸の部族が贈り物にしたり、儀式でも使用した食品

     

     正解はCの「カフワ」です。


    「カフワ」は15世紀のイエメンで、スーフィーと呼ばれる修行者たちの間で広まった飲み物です。スーフィーとは宗派や地域を超えて活動した神秘主義者たちで、修行中にトランス状態にいたることで神の精神に近づけると信じていたため、アヘンや大麻など、戒律すれすれのドラッグに手を出すことも珍しくありませんでした。「カフワ」はもともとエチオピアの紅海沿岸部のスーフィーたちが利用していたドラッグで、「(食欲や眠気などの)欲求を消すもの」を意味します。白ワインや、「カート」という植物の葉から作るお茶も「カフワ」に含まれていました。この「カフワ」が紅海を挟んだイエメンに伝わったのち、入手・保存の容易さなどの理由からコーヒーのカフワが広く用いられることになり、これが現在のコーヒーの起源になったと考えられています。


    Aの「カリ」は、エチオピア西南部のある部族では現在も「コーヒー」の意味で使われている言葉です。この地域では、かなり古くから、種子や葉をお茶のようにして飲んだり、果肉を炒めて食べたり、薬にしたり、求婚する男性から女性の両親への贈り物にするなど、さまざまにコーヒーが利用されてきました。現在の「飲み物としてのコーヒー」の起源とは言えませんが、人類がコーヒーを利用した最初の事例だと考えられています。


    Bの「ブン」は10世紀にペルシアの大医学者、アル=ラーズィーの著述をまとめた『医学集成』(925年刊)に登場する言葉で、コーヒーについて書かれた最初の例だと言われています。ただし「ブン」は、焙煎前の生豆をそのまま煮出すものだった可能性が高く、現代のコーヒーとは別物と考えるべきでしょう。


    Dは、タンザニア西部のブコバと呼ばれる地方で現在でも見られる「噛みコーヒー」です。未熟な果実を薬草と一緒にゆでたあとで天日干し、または薫製にして、それを中の豆ごと噛み砕いて食べます。

     

    【問3】コーヒーの香味について誤っているものはどれ?

     A. コーヒーの苦味の中心を担っているのはカフェインである
     B. アラビカは酸味と香りに優れ、ロブスタは強い苦味とコクを有する
     C. コーヒーの酸味は浅~中煎りで最も強く、深煎りになると減少する
     D. これまでに合計1000種類近い香り成分が、コーヒーから検出されている

     

     正解はAです。


    「コーヒーに含まれる成分」と言われて、真っ先に思いうかべるカフェイン。このカフェインが苦味の正体だと思っている方も多いと思いますが、カフェインを除去したコーヒーも十分に苦いことがわかっています。最新の研究によれば、カフェインが担っているのはコーヒーの苦味全体の1~3割で、苦味の主役は「クロロゲン酸ラクトン類」「ビニルカテコール・オリゴマー」などの苦味物質だと考えられています。


    Bのロブスタはもともと「頑強な」「粗野な」という意味の言葉で、その名の通り、アラビカ種よりも病気に強く、低地でも栽培可能な「頑強」さと、強い苦味とコクのある「粗野」な香味をもった種だとされています。


    Cの酸味のもととなる有機酸は、苦味の成分と同様に焙煎によって生豆中に含まれるショ糖などが分解されて作られます。焙煎が進むにつれて有機酸の量は増えていきますが、深煎りになると、揮発や熱分解によって減少してしまいます。コーヒーで酸味のもととなる有機酸にはフルーツの酸味と同じ成分も含まれており、実際にフルーツのような香味のコーヒーもあります。


    Dにあるように、コーヒーから検出される香り成分はなんと1000種類近くもあります。ただし、このなかには生豆から検出される香り成分で、焙煎すると消えてしまうものも含まれています。また、この数字は浅煎り~深煎りまですべてのコーヒーに含まれる成分の合計であり、一杯のコーヒーから検出される成分は300種類ほどです。

    (コーヒーの苦味成分)

     

    【問4】コーヒーの抽出方法は「透過式」と「浸漬(しんせき・しんし)式」の2つに分けられる。次のうち浸漬式の抽出方法はどれ?

     A. ペーパードリップ
     B. プレス式(コーヒープレス、フレンチプレス)
     C. エスプレッソ
     D. ダッチコーヒー

     

     正解は「Bのプレス式」です。


    「浸漬式」とは、豆を挽いたコーヒー粉と抽出に使う水を一度に混ぜるタイプの抽出法のことで、たとえば紅茶の抽出法は典型的な浸漬式です。


    一方の「透過式」は豆を挽いたコーヒー粉に水を通して抽出するタイプで、プレス式以外のA、C、Dはすべてこの方式。程度の違いはあれ、いずれも浸漬式に比べると成分が濃縮される効果があります。Aのペーパードリップは、喫茶店やご家庭でもおなじみの淹れ方。Cのエスプレッソも近年よく見かけるようになったイタリア生まれの抽出法で、お湯に圧力をかけて非常に濃厚なエキスを抽出するのが特徴です。Dのダッチコーヒーは背丈ほどもあるガラスの筒にコーヒーの粉を入れ、一滴ずつ水をたらしながら抽出する方法です。ちなみにダッチコーヒーという名前はついていますが、オランダとは無関係。じつは日本の京都生まれの抽出法です。

     

    【問5】最近注目の新品種「ゲイシャ」の香り。何にたとえられる?

     A. 赤ワイン
     B. スコッチウイスキー
     C. レモンなどの柑橘類
     D. カシス(クロスグリ)

     

     正解は「Cのレモンなど柑橘類の香り」です。


    ゲイシャは2004年に、新進気鋭の生産国として世界の注目を集めていたパナマで行われたコーヒーのコンテスト「ベスト・オブ・パナマ」で1位を獲得し、それまでの史上最高落札価格を塗り替える1ポンドあたり21ドル、一般的な取引価格の20倍以上の値がついた注目の新品種です。「ゲイシャ」という名前は日本語のようなひびきですが、品種名の由来はこの品種が発見されたエチオピアの村の名前で、日本語の「芸者」は無関係です。


    なお、Aの赤ワインの香りはイエメンモカの独特な香りを喩える表現のひとつで、Bのスコッチウイスキーの香りは深煎りコーヒーのスモーキーな香りと同じ成分です。Dのカシスの香りもケニア産などの一部のコーヒーに時々みられます。

     

    【問6】19世紀末にスリランカ(セイロン)のコーヒー栽培が崩壊した原因は?

     A. 台風(サイクロン)によって農園が大きな被害を受けた
     B. コーヒーノキが枯れる伝染病が蔓延した
     C. イギリスの植民支配への反抗から内乱が起きた
     D. 農園主たちが、もっと利益が得られる紅茶への植え替えを行った

     

     正解はBです。


    「コーヒーさび病」というカビによる伝染病の蔓延によって木が枯れ、スリランカのコーヒー生産は崩壊しました。スリランカは紅茶の産地として有名ですが、Dのように途中で植え替えられたのではなく、さび病のために放棄されて荒れ果てたコーヒー農園を訪れたトーマス・リプトン卿が紅茶を栽培することを思いついたのがはじまりです。このリプトン卿が起こした紅茶会社が有名な紅茶のブランド「リプトン」です。なお、Aの台風によって壊滅的被害を受けた産地としては、二大原品種のひとつブルボンの故郷であるレユニオン島など、Bの植民支配への反抗から起きた内乱で崩壊した産地としてはフランス領だったハイチが挙げられます。

     

    【問7】焙煎にともなって生じる変化として正しいものはどれ?

     A. 温度上昇によって生豆はいったん軟化し、その後、ふたたび硬化する
     B. 豆一粒あたりの重量と体積がともに減少する
     C. 豆は焙煎中に2回ハゼ(爆ぜ)るが、2回目のほうが1回目のハゼよりも大きくて低い音がする
     D. 1回目のハゼが終わった直後から、豆の表面に油脂分がにじみ出てくる

     

     正解はAです。


    含水量と温度が変化することで焙煎中の豆はいったん軟化し、ふたたび硬化するという変化をたどります。細胞壁が軟化しているあいだは、豆の内部から水分が抜けていきますが、ふたたび硬化して空気の逃げ道が塞がれてしまうと豆の内部で高い圧力が発生します。この高温・高圧になった部分で焙焦反応が進行し、コーヒーの香味成分は生まれます。


    水分や揮発成分は蒸発して重量は減少しますが、豆組織は膨張して体積は増加するため、Bは誤りです。Cのハゼ音は、1回目のハゼが「パチッ」という大きくて低い音、2回目のハゼが「ピチピチ」という小さくて高い音で記述が反対です。ちなみにこのハゼ音は家庭ガスコンロをつかった家庭焙煎でも聞くことができますので、ぜひ試してみてください。やり方は『コーヒーの科学』p166に詳しく書いてあります。Dの油脂分の滲出は通常、2回目のハゼに入って、豆組織の崩壊が起きた後で見られる現象です。

     

    【問8】コーヒーノキ属の植物のひとつ、アラビカ種について正しい記述はどれ?

     A. アラビア半島原産である
     B. ロブスタ種の祖先とリベリカ種の祖先が偶然交配して生まれた
     C. 自家受粉では種子ができないため、他家受粉を行う必要がある
     D. 他のコーヒーノキ属の植物の2倍の数の染色体を持つ

     

     正解はDです。


    現在見つかっているコーヒーノキ属125種のなかで唯一、アラビカ種のみが、染色体数が他の種の2倍の44本になっています。染色体の半分がカネフォーラ(ロブスタ)、もう半分がユーゲニオイデス種のものと近く、この2種の自然交配からアラビカ種が生まれたと考えられています。


    Cの自家受粉(ひとつの花の花粉とめしべで受粉すること)が可能なことはアラビカ種の特徴のひとつです。この特徴は、コーヒー栽培が世界に広まった歴史にも影響しています。コーヒーノキがイエメンから持ち出されたときも、オランダからパリ、そしてカリブ海のマルティニーク島へと運ばれたときも、ブラジルに盗み出されたときも、わずか1個、または数個の種子や苗木で新しい土地への移植に成功しました。これは自家受粉が可能なアラビカ種だからこそ可能だったことです。


    Aは、「アラビカ」という学名からこのように誤解されがちですが、アラビカ種の原産地はエチオピア西南部だと考えられています。

     

    【問9】コーヒーサイフォンについて正しい記述はどれ?

     A. 日本で独自に考案された抽出器具である
     B. その原型を最初に発明したのはイギリス人の造船技師、ロバート・ナピアーである
     C. サイフォンの原理によってお湯を移動させながら抽出を行う
     D. 主として浸漬式の原理で抽出が行われる

     

     正解はDです。


    コーヒーサイフォンは、加熱されて膨張したフラスコ内の水が漏斗中に上がって浸漬抽出が行われ、火を消すとフラスコ内の圧力が下がり、コーヒー液がフィルターで濾過されて戻ってくるしくみです。


    「サイフォン」という名前ではありますが、サイフォンの原理は働いていません。サイフォンの原理は高さの異なる2つの水面を、水を満たした管でつないだときに、大気圧によって水が移動する現象です。しかし、コーヒーサイフォンで働いているのは水の蒸発と凝縮から生まれる圧力です。


    コーヒーサイフォンとほぼ同型の抽出器具は、1830~40年代のドイツ、フランスに存在していました。日本のコーヒー本のほとんどには「1840年頃にロバート・ナピアーが開発」と書かれていますが、それはナピアー式コーヒーポットという別の器具です。しかも、開発したのはナピアーの息子で正確な開発年は不明です。

     

        (コーヒーサイフォンのしくみ)

     

    【問10】カフェインについて正しい記述はどれ?

     A. 同じカップ一杯あたりのカフェイン量は、紅茶よりコーヒーが少ない
     B. アラビカの方がロブスタよりもカフェインの含有量が多い
     C. 脳にあるアデノシン受容体をブロックして覚醒作用をあらわす
     D. 焙煎中に昇華して失われるため、浅煎りより深煎りの方が胃に優しい

     

     正解はCです。


    アデノシンは、俗に「脳内麻薬」とも呼ばれるドパミンを抑制する働きを持っています。カフェインがアデノシンを抑制することによって「抑制の抑制」が働き、中枢興奮・覚醒作用が生じます。


    Aの紅茶のカフェイン量はコーヒーの6~7割、緑茶はコーヒーの半分程度です。Bのアラビカのカフェイン量はロブスタの約半分です。


    Dについては、確かにカフェインは焙煎中に気体になって少しずつ豆から抜けていきます。しかし、その減少率は生豆に含まれていたカフェイン量の5~10%と少なく、深煎りと浅煎りでの違いはごくわずかです。深煎りのほうが胃への刺激が弱いのは、「N-アルカノイル-5-ヒドロキシトリプタミド」や「N-メチルピリジニウム」などの胃液分泌調整物質の量が焙煎度によって変化するためだと考えられています。




    みなさんは何問正解できましたか? 全問正解できなかった方、もっと詳しい説明がほしいという方は『コーヒーの科学』をぜひ読んでみてください。だれかに話したくなるコーヒーの話題が満載です!

    さて、わたしは勉強のしすぎで疲れてしまったので、コーヒーを飲んでちょっと一息つかせていただきますね。

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