体外受精児が43万人超に! 不妊治療の最先端とは?

  • 2016/08/29

    • 新刊

    体外受精児が43万人超に!
    不妊治療の最先端とは?

     

    7月に刊行された『不妊治療を考えたら読む本』がご好評をいただいております。
    本書が注目されている理由の一つには、これまで一般にはほとんど伝えられてこなかった「不妊治療の真実」が解説されている点も大きいのではないかと思います。
    ここで、本書の中から、そんな最新の不妊治療のトピックスを少しご紹介しましょう。

     

    みなさんは、日本が「不妊治療の後進国」だということをご存じでしたか?

    晩婚化に伴って、不妊治療を受ける人は年々増えています。
    いまやカップルの6組に1組が不妊に悩んでいて、先日、日本産科婦人科学会が発表したデータによると、2014年には体外受精や顕微授精の実施件数は39万件を超えたそうです。
    なんと、21人に1人は体外受精で生まれている計算になります。日本では、1983年に体外受精で初めて子供が生まれて以来、国内の体外受精児は累計で43万1626人にのぼっています。

     

    日本は、世界でいちばん「不妊治療で出産できない国」だった!

    それなのに、「不妊治療の後進国」とはどういうことなのでしょうか。
    日本は、体外受精の実施件数が世界一多いのに、1回の採卵あたりの出産率は世界最下位。
    じつは日本は「不妊治療で出産できない国、世界1位」だったのです。

     

    こちらのグラフをみると、そのことがよくわかります。

     



     


    日本は、体外受精の実施件数が世界一!

     

     


    それなのに、体外受精での出産率は世界最下位!

     

     

    これは、世界各国の生殖補助医療の実施状況をモニタリングしている組織「国際生殖補助医療監視委員会〈ICMART〉」が世界60ヵ国を調査し、2016年に発表したレポートに基づくデータです。
    日本は、体外受精の実施件数が他国に比べてきわめて多いのに、それが出産に結びついていないということがよくわかっていただけるのではないでしょうか。

     

    治療をしても妊娠できない理由

    いったい、なぜこのような事態となっているのでしょうか?


    日本の技術力が劣っているわけではありません。
    妊娠を望む人の年齢が高くなっている、というのも理由の一つですが、日本人は、効果の低い治療を選択しがちだというのです。

     

    たとえば、体外受精で採卵(卵巣で育った卵子をカテーテルで採り出すこと)をする際、事前に薬を投与して卵巣内でたくさんの卵子を育ててから採る方法もありますが、薬をほとんど使わずに、卵巣内で自然に育った卵子だけを採る「自然周期」という方法があります。
    これは、日本では多く行われているのですが、じつは妊娠率が低いということが明らかになっています。
    実際、海外ではあまり行われていません。
    その成功率の低さゆえに、英国では、国のガイドラインで「自然周期の体外受精は患者に提案しないこと」と定められているほどなのです(「英国立医療技術評価機構〈NICE〉」の診療ガイドラインより)。

     

    不妊治療にもたくさんの選択肢がありますが、最新の研究で明らかになってきたことや、技術の進歩でこれまでの常識が覆ってきたことはたくさんあります。

     

     

    半永久的に受精卵が保存できるように

    もう一つ紹介しましょう。
    それは、いまや受精卵は、凍結させたほうが妊娠率が上がるという事実です。

     

    体外受精では、採卵した卵子と精子を受精させ、受精卵を凍結する技術があります。
    幅0.8㎜の細長い容器の上に、凍結保護物質で包んだ受精卵を載せ、マイナス196℃の液体窒素につけて一気に凍結させます。
    これを「ガラス化法」と呼びますが、この技術が2006年に登場したことよって、より安全に受精卵を凍結することができるようになりました。
    技術的には、半永久的に受精卵を保存しておくことができるのです。

     

     


     


    ガラス化法の技術 

    顕微鏡下で、凍結保護物質で覆った受精卵(胚)を専用の細長い容器に載せていく(写真下は、拡大図)。このあと液体窒素に入れて凍らせる。

     

     

    なぜ受精卵を凍結したほうが妊娠率が上がるのか?

    倫理的な面からも、受精卵を凍結して保存しておくことに、抵抗を感じる人も多いかもしれません。
    ですが、最近は受精卵を凍結したほうが、体外受精の妊娠率は高くなるということが明らかになっています。

    体外受精の際、できた受精卵(胚)を子宮に移植するには二つの方法があります。
    凍結せずに、すぐに子宮に移植する「新鮮胚移植」と、凍結してから移植する「凍結胚移植」です。
    この二つの方法を比べると、最新のデータでは新鮮胚移植より、凍結胚移植のほうが1.5倍も妊娠率は高いのです(日本産科婦人科学会2013年発表データより)。

     

     


    凍結した受精卵を移植したほうが、妊娠率は1.5倍高い

     

    受精卵を凍結しない場合、採卵したその周期に受精卵を子宮に戻さなければならないので、子宮内の状態が整っていないこともあるのですが、受精卵を凍結させると、子宮内膜の状態が着床しやすいように準備ができたタイミングで移植することができるからなのです。
    当初は保存目的で受精卵の凍結が行われていましたが、この事実が明らかになってきたことで、得られた受精卵はすべて凍結するという施設が増えてきています。

     

     

     

     

    妊娠するための「正しい情報」がわかる

    このように、これまであまり知られていなかった最新のデータを示しながら、科学的な視点で妊娠のしくみや不妊治療について解説したのが『不妊治療を考えたら読む本』です。妊娠するための正しい情報が詰まった1冊です。

     

    ※記事内のグラフ・写真は『不妊治療を考えたら読む本』より抜粋

     

     

    『不妊治療を考えたら読む本』
    著:浅田義正、河合蘭

    あさだ・よしまさ /医学博士、医療法人浅田レディースクリニック理事長。一九五四年愛知県生まれ。名古屋大学医学部卒。同大医学部婦人科助手などを経て米国で顕微授精の研究 に携わり、一九九五年、名古屋大学医学部附属病院分院にて精巣精子を用いたICSI(卵細胞質内精子注入法)による日本初の妊娠例を報告する。二〇〇四年 に不妊治療専門の浅田レディースクリニック(現・浅田レディース勝川クリニック)を開院し、二〇一〇年には名古屋駅前にて浅田レディースクリニックを開院。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。

     

    かわい・らん/出産ジャーナリスト。一九五九年東京都生まれ。カメラマンとして活動後、一九八六年より出産に関する執筆活動を開始。東京医科歯科大学、聖路加国際大学大 学院等の非常勤講師も務める。著書に『未妊 ――「産む」と決められない』(NHK出版)、『卵子老化の真実』(文春新書)など多数。二〇一六年、『出生前診断 ――出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)で科学ジャーナリスト賞を受賞。

新着情報一覧

ページTOPへ