ぼくたちはなぜぼくたちだけなのだろう

文 川端裕人

監修 海部陽介(国立科学博物館 人類史研究グループ長)

かつて地球上には、ぼくたちと同じ「人類」の仲間がたくさんいた。彼らはなぜ滅んでしまったのか?
なぜぼくたちだけが生き残ったのか?
人類進化のホットスポット、アジアの化石発掘現場から始まる壮大な謎解きの旅!

(画像提供:国立科学博物館)

第3回 これからのロードマップ

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「成果」はなかったけれど

原人の歯から、原人と同時代を生きた動物の骨までがたくさん集められ、整理されている(筆者写す)

 自分のこの手と目で、ジャワ原人の化石を見つけてやる!
 ジャワ島サンブンマチャン村の発掘現場で、ヒトの歯かもしれない化石を見せてもらったぼくは、にわかに意気込んだ。
 しかし、さっきまで使っていたタガネとハンマーが、ない。見回すと、もう誰かが手にとって、地層と向き合っている。みな、我も我もと掘りたがるので、道具は奪い合いになるのだ。厳しい道具争奪戦に敗れて、しばらくぼくは、その日見つかった標本を検分しながらの浪人生活となった。
 それはそれで、また楽しい。
 村人たちが、三々五々、自分が掘り出した動物の骨を誇らしげにもってくる。スイギュウだのシカだの、彼ら、ジャワ原人が住んでいた環境で一緒に暮らしていた生き物たちが、どんどんやってくる。ひたすら暑い中で、タガネとハンマーの音が音楽のように聞こえてきて、化石が踊り出しそうだ。
 昼食の休憩終わりのタイミングで、ぼくはやっと自分の「道具」を取り戻し、発掘に復帰できた。あとは無心に夕方まで地層を剥がした。

サンギランの博物館に展示されているジャワ原人の想像図(筆者写す)

 結局、ぼく自身は、このときの発掘で人類化石を見つけることはできなかった。石器を作ったときにはがれた剥片かもしれないという微妙な薄い石のほかは、小さな水牛かなにかの骨片が出てきたのみ。しかし、ハンマーのすべての一撃ごとに、この先にあるかもしれない発見を予期して、わくわくし通しだった。
 本当に、今、自分がいるここに、いにしえの人類、いわば「はじめ人間」(マンガの「はじめ人間ギャートルズ」は明らかに現生人類ホモ・サピエンスだが)のような人たちがいたと想像するのは、興奮させられることだ。
 ぼくは、アジアの人類学の深みにはまりつつある、とそのとき自覚した。いずれ、海部さんと一緒にこのテーマを掘り下げたものを書くだろう、という確信も頭をもたげた。

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文 川端裕人

かわばた・ひろと 1964年兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。東京大学教養学部卒業。日本テレビ在職中に『クジラを捕って、考えた』を執筆、文筆デビュー。1997年よりフリーランス。小説作品に『銀河のワールドカップ』『星と半月の海』、ノンフィクション作品に『動物園にできること』など多数。最新刊は、一線の宇宙論研究者との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)、駆け出し声優のお仕事小説『声のお仕事』(文藝春秋)、『青い海の宇宙港(春夏篇・秋冬篇)』(早川書房)など。

メールマガジン「秘密基地からハッシン!」(http://yakan-hiko.com/kawabata.html)を配信中。

連載一覧

連載読み物

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誰が小型化したのか?  2003年、フローレス島で見つかってセンセーション...

2017/08/31

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