科学検定 公式問題集3・4級

科学検定 公式問題集3・4級

著者 竹田淳一郎(たけだ・じゅんいちろう)
著者 桑子 研(くわこ・けん)
監修 竹内 薫(たけうち・かおる)

科学の見方と考え方の再発見

まえがき

 みなさんは、もう科学検定を受けましたか? あ、3回目ですか。ありがとうございます。え? まだですか? なになに、本書で内容を調べてから受検するかどうか決める?
 では、そんな、まだ受けていないけれど本書を手に取った方々のために、そもそもの科学検定の「始まり」について、5・6級を扱った前書から引用してみたいと思います。
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 そもそも科学検定は、日本人の「科学離れ」に危機感を抱いた有志が集まって、「科学を盛り上げるにはどうしたらいいのか」と、知恵を出し合った結果、生まれました。「ええ? 日本人は『科学離れ』を起こしているの? そんなの初耳だよ」と思われるかもしれません。でも、私みたいに科学応援団として25年も科学技術を伝える仕事をしていると、危機感が半端じゃないんです。
 たとえば日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)の予算はアメリカのNASA(航空宇宙局)の10分の1、科学雑誌の売れ行きも10分の1、医療を見ても、レーシック手術を受ける人が年間、アメリカの200万人に対して20万人で、これまた10分の1。ええと、ようするに、真の科学技術立国アメリカと比べて、日本の科学技術の規模は一桁、数字が小さいんです。インターネットでも科学技術に対する根拠のない悪口や否定的な意見ばかりが目立ちます。識者のなかにも科学技術に嫌悪感を示す人が少なくありません。
 もともと日本は自然に恵まれており、森羅万象に神様が宿る、という考えをもっている人が多いように思います。ですから、科学技術が自然環境や人間の身体をいじってしまうことに心理的な抵抗を覚え、科学技術が嫌いな人が増えるのかもしれません。
 でも、ちょっと待ってください! 自然と科学技術は、本来、バランスをとって両立すべきものなのです。そもそも、完全な自然状態では、人間は、生きてゆくことができません。江戸時代にだって帰ることは難しいでしょう。電気や医療のない世界では、平均寿命も今の半分くらいになってしまうでしょうし、貧富の差で生死が決まるような世界がいいとは思えません。
 現代日本に生きるわれわれが幸せなのは、ひとえに、明治以降の科学技術の恩恵なのです。でも、いつのまにか、日本人はそのことを忘れ、科学技術の失敗や事故ばかりをあげつらうようになってしまいました。
 奇妙なことに、世界からは、いまだに日本の科学技術は羨望の眼差しで見られています。クルマもデジカメもiPS細胞も……メイド・イン・ジャパンは世界有数のブランドなのです。でも、日本国内では、科学技術の現場も含めて、徐々に自信と誇りが失われつつあります。
 このような危機的状況にある日本の科学技術をふたたび盛り上げるには、どうすればいいのか? われわれは、そのキーワードが「草の根」にあると感じています。最前線の科学者やエンジニアの頑張りだけでは限界があります。小学生から大人まで、みんなで、もう一度、科学を見直し、その面白さに気づき、応援するしかないのです。
 その一つの方法として、われわれは、誰でも気軽に受けることのできる「検定」に白羽の矢を立てたわけなのです。
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 すみません、ちょっと長くなりましたが、科学検定にかかわっているわれわれの意気込みが少しは伝わったでしょうか。
 このまえがきを書いている今、テレビや新聞では、「STAP細胞は作製できず」という理化学研究所の会見の話題で持ちきりです。科学関係者の間では、日本最高峰の研究所を舞台に起きた科学論文の捏造と改ざんという事態を深刻に受け止め、危機感が募っています。日本の科学教育が「劣化」したのが今回の事件の一因だと考える人もいます。
 数ヵ月前になりますが、御嶽山の突然の噴火により、大勢の命が失われました。その際、「日本は科学立国なのに火山の噴火が予知できないの?」という声を多く耳にしました。私は個人的に(火山の内部の様子をレントゲンみたいに撮影する特殊な手法を使って)、将来的には火山の噴火予知が可能になると考えていますが、残念ながら、その方面の研究はあまり進んでいません。そもそも日本には火山学者がほんの一握りしかいないのです。その理由の一つも、ほとんどの人が学校で「地学」を勉強しなくなったからだと考えられます。
 大変です。日常のニュースを見ていると、あらゆるところに日本の科学の「劣化」の兆候が見られるように思われます。
 でも、まだ日本の科学は完全にダメになったわけじゃありません。先日、打ち上げが成功したJAXAの「はやぶさ2」は、太陽系ができた頃の物質が残っている(と思われる)小惑星まで、約4年かけて、宇宙を52億キロメートルも旅します。そして、ドカーンと銅の塊をぶつけて、小惑星の内部の物質を採取して、地球に持って帰ってくる予定です。そこには生命の素(もと)となる有機物が含まれているでしょうか。もし含まれていたら、地球の生命の素が宇宙からやってきた証拠になるかもしれません。このような宇宙技術は、日本が世界をリードしています。まだまだ、日本の科学も頑張っているんですね。
 つまり、日本の科学は、劣化する兆候が見られるとはいえ、若い人々が科学に興味を抱いて、科学を勉強し、科学関係の仕事に就いてくれれば、まだまだ復活可能だと思うのです。
 今、「若い人々」と書きましたが、本書が扱う科学検定3・4級は、どのような位置づけなのでしょうか。科学検定のホームページ(http://www.kagakukentei.jp)を見ると、3級=中学応用・高校基礎、4級=中学基礎と書いてあります。つまり、おおまかに、4級は「中学の低学年」、3級は「中学の高学年と高校の低学年」を対象にしていることがわかります。実は、この中学から高校にかけての時期が科学教育においては大切です。小学校で、は、ほとんどの子どもが「科学好き」なのですが、なぜか、中学、高校と進むにつれて、科学嫌いの子どもが急増してしまいます。その理由の一つは「受験」のための丸暗記だともいわれていますが、定かではありません。ただ、この時期に科学が嫌いになる子どもが多いことは事実です。
 科学検定では、受験という現実を受け入れつつも、丸暗記だけではなく、「考える楽しさ」を重視した問題を選ぶようにしています。人間誰しも、楽しいことに、より多くの時間をさきたいと思うのはあたりまえ。そして、科学は本来、ワクワクドキドキできて楽しいもの。われわれは、その科学の本当の姿を中学生と高校生に伝えられるよう、問題作成会議で丁々発止の議論を続けています。
 あ、もちろん、3級と4級は大人のみなさんにも受けていただきたいと思います。「え〜? 昔やったはずなのになぁ」「お、意外と難しいんじゃね?」というふうに楽しみながら、ぜひ、みんなで受検してみてください!
科学検定委員会委員長サイエンス作家 竹内薫

著者 竹田淳一郎(たけだ・じゅんいちろう)

一九七九年東京生まれ。慶應義塾大学理工学部応用化学科卒業、同大学大学院修了。早稲田大学高等学院化学科教諭、早稲田大学教育学部非常勤講師、気象予報士。授業では実験を重視し、定番のものに独自のアイデアをプラスして新鮮な驚きを提供している。著書に『大人のための高校化学復習帳』(講談社)。

著者 桑子 研(くわこ・けん)

一九八一年群馬生まれ。東京学芸大学卒業、筑波大学大学院修了。共立女子中学高等学校にて物理教師として勤務。「3ステップ解法」という教え方を開発し、手作り実験を大切にした授業を展開している。著書に『大人のための高校物理復習帳』(講談社)など。科学のネタ帳:http://phys-edu.net/

監修 竹内 薫(たけうち・かおる)

一九六〇年東京生まれ。東京大学教養学部教養学科、同大学理学部物理学科卒。マギル大学大学院博士課程修了。理学博士。サイエンス作家、科学検定委員会委員長。『不完全性定理とはなにか』(講談社)など著書多数。

[B1900]

科学検定公式問題集 3・4級 科学の見方と考え方の再発見

著:桑子研,
著:竹田淳一郎,
監:竹内薫

選りすぐりの例題と、こん切ていねいな解説、そして学校では習わない視点と考え方で科学の知識の枠をどんどん広げ、確実に実力がアップする。

定価 : 本体1,080円 (税別)

ISBN : 978-4-06-257900-1

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