原子番号113番の新元素 「ニホニウム」に決定!

  • 2016/11/30

    • ニュース

    原子番号113番の新元素
    「ニホニウム」に決定!

    理化学研究所のグループが発見した原子番号113番の新元素について、名称が「ニホニウム」、元素記号が「Nh」と決定されたことが、IUPAC(国際純正・応用化学連合)から本日発表されました。

    この名称案は森田浩介グループリーダーらが6月8日に発表していたもので、5ヵ月間のパブリックレビュー期間を経て、正式な元素名と元素記号として採用されました。今後、周期表に日本発の元素が加わることになります。
    今年6月に行った森田先生へのインタビューを再掲します。

     

     

    *

     

     

    現在周期表に載っている元素のうち、92番のウランまでは自然界から発見されてきましたが、それよりも重い元素は人工的に合成することでその存在が確かめられてきました。新元素「ニホニウム」も、理研の重イオン線形加速器「RILAC」を用いて、亜鉛(Zn:原子番号30)とビスマス(Bi:原子番号83)を衝突させることで合成されたものです。

    この実験を主導された森田浩介先生(理研仁科加速器研究センター 超重元素研究グループ・グループリーダー、九州大学大学院理学研究院教授)にお話を伺いました。


    ――まずは、新元素の発見おめでとうございます。「日本」という名前が周期表に載るということ、とても誇らしい気持ちです。森田先生が新元素(超重元素)合成の研究を始めた理由、きっかけを教えてください。

    森田 1984年3月、九州大学の大学院の博士課程を満期退学し、行き場のなかった私を理化学研究所の研究員でいらした野村亨博士が理研にポスドク(流動研究員)として誘ってくださいました。その後まもなく定年制の研究系職員、研究員補として理研に採用していただいたことが新元素の研究を始めたきっかけです。野村博士は当時建設中であった理研の加速器“リングサイクロトロン”を利用して(超)重元素の研究を開始されようとしていましたが、私はその実行メンバーの一人として理研での研究開発を行うようになりました。

    ――今回は「ニホニウム」と同時に、原子番号115番の「モスコビウム」、117番「テネシン」、118番「オガネソン」の名前も発表されています。なぜ森田先生は113番目の元素を研究対象に選んだのでしょうか?

    森田 私たちの研究グループが本格的な実験的研究に着手した時、112番元素までの発見がなされていました。その自然な延長線上に113番元素の探索がありました。

    ――「ニホニウム」はどのような元素なのでしょう? 水素や酸素といった身近な元素とはどこが違うのでしょうか?

    森田 元素としての化学的な性質は分かっていません。水素や酸素との違いは質量(重さ)が大きいこと、安定な同位体(原子番号は等しいが重さ〔質量数〕の違う原子)が存在しないことなどです。ニホ二ウム原子の同位体は現在6種類知られています。これらの原子はすべてアルファ崩壊をして原子番号の2小さいレントゲニウムという元素の同位体に変化します。理研で合成したものは質量数が278の1種類、ロシア・アメリカの共同研究グループが作り出したのは質量数が282、283、284、285、286の5種類です。元素としての性質は共通ですが(その性質は分かっていませんが)質量数の大きい同位体ほど長寿命であることが分かっています

    ――「ニホニウム」を合成するために衝突させる元素はなぜ、亜鉛とビスマスの組み合わせなのでしょうか? 原子番号を足して113になる他の元素の組み合わせではなぜだめなのでしょうか?

    森田 元素を合成するには原子核同士を衝突させなくてはなりません。原子核はプラスの電気をもった陽子と電気的に中性の中性子が固く結びついてできており、全体としてはプラスの電気を帯びています。したがって1個の原子核の電気の量は中に含まれている陽子の数に比例します。原子核に含まれている陽子の数が原子番号です。二つの原子核同士を衝突させて融合させようとしたとき、二つの原子核の間には電気的な反発力が働きます。電気的な反発力の強さは二つの原子核のそれぞれの電気の量の積(原子番号の積)に比例し、原子核同士の距離の2乗に反比例します(クーロンの法則)。重たい元素を合成するためには、電気的な反発力が小さいほど有利になります。
    衝突させる元素の、一方の原子番号を Z1 としてもう一方の原子番号を Z2 とすると、113番元素を作るには Z1 + Z2 = 113 となる組み合わせの中から Z1×Z2 がなるべく小さくなるものを選ぶことが必要になります。それには Z1 と Z2 がより対称的でない組み合わせを選べばよいことが分かります。安定な原子核同士の組み合わせの中で最も非対称な組み合わせが Z1=30、Z2=83 なのです。このときの電気的な反発力の強さは 30×83 = 2490 ですが、たとえば Z1=56、Z2=57 の組み合わせを選んだとすると56×57 = 3192 になります。



    理研の実験装置と森田先生(写真提供:山根一眞氏)

    衝突させる元素に「亜鉛」と「ビスマス」が選ばれたのには、こんな理由があったんですね! だたし、もっとも合成に有利な組み合わせを選んでも、簡単に新元素が作れるわけではありません。
    森田先生が113番元素の合成実験を始められたのは2003年9月5日のこと。それから約1年後の2004年7月23日に、ようやく1個目の113番元素の合成が確認され、さらに2005年4月2日に2個目の合成に成功しました。しかしこれだけではまだ、新元素発見として正式に認められません。さらなる証拠を求めて実験を続けること7年、2012年8月12日についに3個目の合成が確認され、今回の新元素発見の認定につながったのです。9年間、合計400兆回という気の遠くなるような回数の衝突から作られた、わずか3個の113番元素。これが、欧米以外で発見された初めての新元素となったのです。

     

     

    『元素111の新知識 第2版増補版』
    桜井弘 編

    月刊文藝春秋21世紀図書館[立花隆選の100冊]に選出された定番ロングセラーに「112~118番元素」と「新元素の展望」を加えた増補版

    『金属なんでも小事典』
    増本健 監修/ウォーク 編著

    金属とはなにかがよくわかる!
    「金属」と総称される物質の特徴とはなんでしょうか。金属光沢、丈夫さ、電気や熱をよく伝えるといった性質はどうして生じるのでしょう。いつ、どうやって金属元素はこの宇宙に誕生したのでしょうか。こうした物理的な基礎にはじまり、鉄やアルミニウムのような身のまわりにあふれた金属の精錬の原理から加工法、形状記憶合金やアモルファス金属などの先端素材の製法や応用技術、生活の中で重要な位置を占める金属製品の作り方、さらには生命と金属のかかわりにいたるまで、金属に関するさまざまな話題をひろってやさしく解説します。

    『 原子爆弾』
    山田克哉

    人類の「叡知」が生み出した無差別大量殺戮兵器!!
    いかにして世に生まれてきたのか?
    無差別大量殺戮兵器の巨大なエネルギーはどこからどのようにして発生するのか? この疑問に答えるべく、原子核の世界の秘密を明らかにしてきた近代物理学の歩みを紹介しながら原爆の理論と開発の歴史を臨場感いっぱいに詳説する。輝かしい近代ノーベル賞の歴史は、そのまま原爆開発の歴史にも重なる。

    『新・材料化学の最前線』
    首都大学東京 都市環境学部 分子応用化学研究会 編

    材料研究はアイデアの宝庫
    こんな方法をどうやって思いついた?

    分子・原子レベルで設計する先端材料の世界
    磁石で浮かべてつくる完全な球、老化を抑える人工酵素、超高密度記録ハードディスク、光の反射が起こらないモスアイ構造など興味深い21テーマを厳選して紹介。さまざまなアイデアを駆使して分子1個、原子1個を操る材料化学は、我々の未来を大きく変える。

    『金属材料の最前線』
    東北大学金属材料研究所 編著

    “金属材料を知ることは、近未来を知ることだ” 材料研究の世界的研究所の一つの東北大学金属材料研究所による金属材料の最前線。日進月歩の機能材料金属から、より性能を増した構造材金属までを解説する。

新着情報一覧

ページTOPへ