原子番号113番の新元素 名称は「ニホニウム」へ

  • 2016/07/01

    • ニュース

    原子番号113番の新元素
    名称は「ニホニウム」へ

    理化学研究所の森田浩介グループリーダーらが発見した原子番号113番の新元素。6月8日に、その名称案が「nihonium(ニホニウム)」、元素記号は「Nh」と発表されました。これから、5ヵ月間のパブリックレビュー期間を経て、IUPAC(国際純正・応用化学連合)から正式な元素名と元素記号名として発表されれば、周期表に初めて日本発の元素が加わることになります。

    現在周期表に載っている元素のうち、92番のウランまでは自然界から発見されてきましたが、それよりも重い元素は人工的に合成することでその存在が確かめられてきました。新元素「ニホニウム」も、理研の重イオン線形加速器「RILAC」を用いて、亜鉛(Zn:原子番号30)とビスマス(Bi:原子番号83)を衝突させることで合成されたものです。

    この実験を主導された森田浩介先生(理研仁科加速器研究センター 超重元素研究グループ・グループリーダー、九州大学大学院理学研究院教授)にお話を伺いました。


    ――まずは、新元素の発見おめでとうございます。「日本」という名前が周期表に載るということ、とても誇らしい気持ちです。森田先生が新元素(超重元素)合成の研究を始めた理由、きっかけを教えてください。

    森田 1984年3月、九州大学の大学院の博士課程を満期退学し、行き場のなかった私を理化学研究所の研究員でいらした野村亨博士が理研にポスドク(流動研究員)として誘ってくださいました。その後まもなく定年制の研究系職員、研究員補として理研に採用していただいたことが新元素の研究を始めたきっかけです。野村博士は当時建設中であった理研の加速器“リングサイクロトロン”を利用して(超)重元素の研究を開始されようとしていましたが、私はその実行メンバーの一人として理研での研究開発を行うようになりました。

    ――今回は「ニホニウム」と同時に、原子番号115番の「モスコビウム」、117番「テネシン」、118番「オガネソン」の名前も発表されています。なぜ森田先生は113番目の元素を研究対象に選んだのでしょうか?

    森田 私たちの研究グループが本格的な実験的研究に着手した時、112番元素までの発見がなされていました。その自然な延長線上に113番元素の探索がありました。

    ――「ニホニウム」はどのような元素なのでしょう? 水素や酸素といった身近な元素とはどこが違うのでしょうか?

    森田 元素としての化学的な性質は分かっていません。水素や酸素との違いは質量(重さ)が大きいこと、安定な同位体(原子番号は等しいが重さ〔質量数〕の違う原子)が存在しないことなどです。ニホ二ウム原子の同位体は現在6種類知られています。これらの原子はすべてアルファ崩壊をして原子番号の2小さいレントゲニウムという元素の同位体に変化します。理研で合成したものは質量数が278の1種類、ロシア・アメリカの共同研究グループが作り出したのは質量数が282、283、284、285、286の5種類です。元素としての性質は共通ですが(その性質は分かっていませんが)質量数の大きい同位体ほど長寿命であることが分かっています

    ――「ニホニウム」を合成するために衝突させる元素はなぜ、亜鉛とビスマスの組み合わせなのでしょうか? 原子番号を足して113になる他の元素の組み合わせではなぜだめなのでしょうか?

    森田 元素を合成するには原子核同士を衝突させなくてはなりません。原子核はプラスの電気をもった陽子と電気的に中性の中性子が固く結びついてできており、全体としてはプラスの電気を帯びています。したがって1個の原子核の電気の量は中に含まれている陽子の数に比例します。原子核に含まれている陽子の数が原子番号です。二つの原子核同士を衝突させて融合させようとしたとき、二つの原子核の間には電気的な反発力が働きます。電気的な反発力の強さは二つの原子核のそれぞれの電気の量の積(原子番号の積)に比例し、原子核同士の距離の2乗に反比例します(クーロンの法則)。重たい元素を合成するためには、電気的な反発力が小さいほど有利になります。
    衝突させる元素の、一方の原子番号を Z1 としてもう一方の原子番号を Z2 とすると、113番元素を作るには Z1 + Z2 = 113 となる組み合わせの中から Z1×Z2 がなるべく小さくなるものを選ぶことが必要になります。それには Z1 と Z2 がより対称的でない組み合わせを選べばよいことが分かります。安定な原子核同士の組み合わせの中で最も非対称な組み合わせが Z1=30、Z2=83 なのです。このときの電気的な反発力の強さは 30×83 = 2490 ですが、たとえば Z1=56、Z2=57 の組み合わせを選んだとすると56×57 = 3192 になります。



    理研の実験装置と森田先生(写真提供:山根一眞氏)

    衝突させる元素に「亜鉛」と「ビスマス」が選ばれたのには、こんな理由があったんですね! だたし、もっとも合成に有利な組み合わせを選んでも、簡単に新元素が作れるわけではありません。
    森田先生が113番元素の合成実験を始められたのは2003年9月5日のこと。それから約1年後の2004年7月23日に、ようやく1個目の113番元素の合成が確認され、さらに2005年4月2日に2個目の合成に成功しました。しかしこれだけではまだ、新元素発見として正式に認められません。さらなる証拠を求めて実験を続けること7年、2012年8月12日についに3個目の合成が確認され、今回の新元素発見の認定につながったのです。9年間、合計400兆回という気の遠くなるような回数の衝突から作られた、わずか3個の113番元素。これが、欧米以外で発見された初めての新元素となったのです。

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