【サイエンス 7days】 第80回 8月7日~8月13日

  • 2017/08/07

    • ニュース

    第80回 8月7日~8月13日
    物理学者ディラックが誕生

    地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今週も "サイエンス7days" のコーナーをお届けします。

    "サイエンス7days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介する「この日なんの日」のコーナーです。

    第80回は今日8月7日から8月13日までの一週間をみていきましょう。

    8月7日 日本初のジェット機が試験飛行(1945年)

    この日、日本海軍によって製作されたジェット機「橘花(きっか)」が、初めての試験飛行を行いました。ジェット機にはプロペラがなく、高温・高圧の噴流をジェット・エンジンで後方に噴出させ、その反動で飛行します。この日の試験では、高度600メートルを時速488キロメートルで飛行することに成功しましたが、終戦直前のことで、橘花が実戦に投入されることはありませんでした。ちなみに、世界初のジェット機は、1938年8月に初飛行に成功したドイツ・ハインケル社の「He178」です。当時のジェット機は従来のプロペラ式の飛行機よりも性能が低く、たとえば「橘花」の最高速度は「零戦」の時速518キロメートルに及びませんでした。しかし、20世紀後半にジェット・エンジンとファンを組み合わせたターボジェット・エンジンが実用化されると、その性能は大きく向上し、今日の大型ジェット輸送機の時代が到来しました。

    試験飛行直前の橘花の機体

     

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    『ジェット・エンジンの仕組み』
    560トンの機体を、高度1万メートルの上空でマッハ0.85で飛ばすことができる究極の内燃機関ジェット・エンジン。このジェット・エンジンの原理と仕組みを工学的にわかりやすく解説するとともに、最新のエンジン開発の過程も紹介します。

    8月8日 物理学者のディラックが生まれる(1902年)

    この日、量子力学の基礎を築いた物理学者のポール・ディラックが、イングランドに生まれました。ディラックは、ハイゼンベルクの「行列力学」とシュレーディンガーの「波動力学」が等価であることを示し、ブラとケットという記号(下の図)を使った一般的な量子力学の体系を確立したことで知られています。1928年に提唱した、ディラック方程式は、量子力学と相対性理論の融合である「相対論的量子論」の基礎方程式であり、ディラックの最大の業績とも言われています。この方程式によって、電子のスピンという概念が自然に説明され、また陽電子の存在が予言されました。ディラックは、自分の考案した方程式から「正の電荷を持った陽子」の存在が導き出されることを、理論の欠陥であると考えていたそうですが、のちに「陽電子」が実際に発見されると、「方程式は私より賢かった」と言ったそうです。

    ブラ‐ケット表記を用いて表したシュレーディンガー方程式

     

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    『宇宙は「もつれ」でできている』
    英紙選「量子論の名著ベスト10」にガモフらの著作と並んでランクインした名著の待望の邦訳! 最高の頭脳を翻弄した“量子の奇妙なふるまい”が、「宇宙観」に革命をもたらした!? 量子力学100年の発展史を一気に読ませる傑作です。

    8月9日 長崎に原子爆弾(1945年)

    この日の午前11時2分、プルトニウム型原子爆弾の「ファットマン」が、米国の爆撃機B29「ボックスカー号」から、長崎に投下されました。この爆弾の威力はTNT火薬にして約22キロトンに相当し、爆心地から半径1キロメートル以内の建物はほぼすべてが全壊しました。この爆弾による死者はこの年だけで7万人以上にのぼり、その後も放射線の被曝によって多くの人々が苦しむこととなりました。「ファットマン」に用いられたプルトニウムは自然界には存在しない元素で、ウランよりもさらに不安定な性質を持ちます。この特徴によって、「ファットマン」は広島に投下された「リトルボーイ」よりも強力な爆弾となったのです。

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    原子爆弾の莫大なエネルギーは、ウランやプルトニウムという元素が持つ特殊な性質に由来するものです。表面的な知識の羅列を避け、なぜその元素がそういう性質をもつのか、なぜそのような用途に使われるのかを、やさしく、深く掘り下げて解説。113番「ニホニウム」や118番「オガネソン」など新元素の解説も加えた最新版です!

    8月10日 日本初のインスタントコーヒー(1960年)

    この日、製菓・乳業メーカーの森永製菓が、日本初の国産インスタントコーヒーを発売しました。好きな時に手軽に飲めるコーヒーとして世界中で親しまれているインスタントコーヒーですが、アメリカで初めて特許を取得したのは、シカゴ在住のカトウ・サトリという日本人化学者だったそうです。実用的な製品としてはベルギー人のジョージ・ワシントンが1906年に特許を取得したものが始まりで、第一次世界大戦中にはヨーロッパに赴く兵士にこのコーヒーが支給されたそうです。ちなみに、缶コーヒーの発明にも日本人は大きく関わっており、世界初の実用的な缶コーヒーは、島根県の三浦義武が1965年に開発した、ミラコーヒーだと言われています。

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    『コーヒーの科学』
    コーヒーはどうやってできるのか、いつから飲まれていたのか、その成分はなにで、どのように生じるのか。コーヒーにまつわるあらゆる情報を、科学の視点から解説した、ツウにはたまらない一冊です。

    8月11日 20世紀最後の皆既日食(1999年)

    この日、20世紀で最後の日食が、北大西洋、欧州から中東、インドにかけて観測されました。観測できる地域が、人口の多い地域と重なったため、人類史上最も多くの人が観測した皆既日食であったと考えられています。日食は、月が太陽の前を横切ることで生じる現象で、完全に太陽の姿が隠される場合を「皆既日食」、部分的に隠される場合を「部分日食」と呼んでいます。今年の8月22日にもアメリカの一部で皆既日食が起こる予測ですが、残念ながら日本からは観測することができません。次に、日本で皆既日食を見ることができるのは、2035年の9月2日になるそうです。ちなみに、わたしの故郷である火星でも日食はときどき起こっていて、地球からやってきた探査機が火星の日食を観測したこともあるんですよ。

    火星探査車オポチュニティが2004年3月10日に撮影した衛星フォボスによる日食(画像提供:NASA)

     

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    『今さら聞けない科学の常識2』
    数年に一度やってくる、日食や月食。なにが起こっているのか正しく説明できますか? 意外と答えられない、科学の疑問を集めた一冊です。

    8月12日 ペルセウス座流星群

    ペルセウス座流星群は、毎年7月から8月にかけて出現する流星群で、しぶんぎ座流星群、ふたご座流星群とあわせて、三大流星群と呼ばれています。今年、2017年のペルセウス座流星群は、12日の夜から13日の朝にかけて、もっとも多くの流れ星が見られると予想されています。流星群は、彗星から放出された物質によって作られる塵の帯(ダストトレイル:下の画像)を、地球が公転運動によって横切る際に生じるものです。ペルセウス座流星群は、スイフト・タットル彗星という、133年周期で太陽の周りを回る彗星から放出された塵が地球に降り注ぐことで、発生するものと考えられています。

    スピッツァー宇宙望遠鏡が撮影したシュワスマン・ワハマン第3彗星のダストトレイル。斜めの直線状に見えているのがダストトレイルで、4つに分裂した彗星の核がこの帯上に並んでいる。(画像提供:NASA/JPL-Caltech)

     

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    8月13日 生化学者のサンガーが生まれる(1918年)

    この日、タンパク質のアミノ酸配列決定法を考案したことで知られる生化学者、フレデリック・サンガーが、イギリスのグロスタシャーに生まれました。サンガーは、自らが考案した手法(サンガー法)によって、インシュリンのアミノ酸の配列順序・化学構造式を特定することに成功しました。これがタンパク質がアミノ酸の連結からなることの決定的な証拠となり、この業績によって1958年にノーベル化学賞を受賞しています。さらに、サンガーはDNAの塩基配列を決定する手法も考案しており、1977年にはφX174というウイルスの全塩基配列を確定しています。φX174は塩基配列がすべて決定された最初の生物です。この業績によって、サンガーは2度目のノーベル化学賞を1980年に受賞しています。

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